行政が強力に推し進める「働き方改革」ですが、その行く末は中小企業にとっては必ずしも芳しいものではなく、労務コストの増大として経営者を苦しめていく可能性が考えられます。
とある製造業の社長にお会いした時のことです。
「働き方改革のおかげで従業員に研修を受けさせられなくなった。そのようなことをすれば研修当日の通常業務が行えなくなりすべて翌日回しか持ち帰りが必要になる。生産性を上げる研修を行う前に新規で人材を採用するしかなくなる。」
というお話しでした。
残業をさせられないことは従業員にとっての手取り減だけではなく、経営者側も事業運営に支障が起きているという生々しい例です。
また、別のビル清掃会社の社長のお話しです。
「働き方改革により従業員が頑張ってくれていたサービス残業分をすべて支払われなくてはならなくなる。
従業員のおかげで回ってきたが、「働き方改革」を理由に発注主が清掃代を増やしてくれるはずがない。
働き方改革法は2019年4月からだが(一部は2020年4月以降から施行)、もう今が潮時だ。ここで廃業することにする。」
という驚きの廃業宣言でした。
清掃業などの労働集約型産業では売上原価の多くを人駆が占めてしまうため、労務コストの増大と利益の減少に与える影響は相当のものがあります。
このように、生産性を上げる前にキャッシュフローの圧迫として先に現れるのが「中小企業に与える働き方改革の影響」なのかもしれません。
人事・労務にまつわるキャッシュフローの圧迫は人事・労務では解決しずらいです。
むしろ経営資源において「労働」と補完関係にある「資本」「資産」を活用すべきように思います。
具体的には、財テク、土地活用、過剰設備の見直し、資産の売却などですね。
「生産性の改善」を行うための時間稼ぎと資金稼ぎのために、ぜひ今一度、遊んでいる「資産」がないのかを見直したいものです。
ひょっとしたら労務コスト増分のキャッシュインを生み出せたり、売却によりまとまった資金の確保が可能になるかもしれません。
できるだけ早く対応方法を検討するのが得策と考えます。