テナント店舗に貸すオーナーにとって賃料と同じぐらい大切なものが保証金です。

テナントが入居するときにオーナーに預け入れてくれる金銭のことですが、このお金の大切さは店舗の賃貸経営をされて一度テナントと揉めた方には身に染みてわかります。

テナント店舗はチェーン店であれば当該店舗の売り上げに左右されずに賃料を払ってきますが、単独店舗の場合にはその店舗の売り上げが悪いとお金が無くなり賃料不払いを起こします。

オーナーに家賃を支払わなくなるわけです。

このときオーナーは一般的な賃貸借契約によれば、預かっている保証金から賃料分を差し引いてよいと定めてあるので、保証金から実際に賃料相当額を引き出しますが、これが何か月も続けば保証金も底をつきます。

したがって、減少した保証金について、その分をテナントが補充しなければいけない、と賃貸借契約書には記載されています。

業績のよろしくない店舗はこの保証金の追加を行うことができず、結局数か月後には債務不履行となり契約が終了したりします。

こうなってしまうとテナントは退去をするわけですが、退去時に行う「原状回復工事」さえ支払えないことも多くあります。

会社が倒産状態になれば仕入れた商品の支払いや従業員の給料、光熱費や設備のリース代に加えて、家賃まで支払うに窮するわけですから、原状回復工事なんて行える余力さえありません。

そこで役に立つしかないのが保証金です。

原状回復工事費用(主に物品や間仕切壁、一部設備、内装等の撤去費用ですが)は少なくとも預かっておかなければ、オーナーが次のテナントを誘致するために、自分で費用負担して原状回復工事をしなければいけなくなるわけです。

上記の2点を考えると、

保証金>数か月分の賃料分+原状回復費用

という式が成り立ちます。

ここまで預かっておかなければ急にテナントが倒産した際にオーナーがとんでもない費用を負担することになりかねません。

その昔は保証金は家賃の30か月分や50か月分などという時期もありました。

現在では6~12か月分といったところでしょうか。

テナントの出店意向の強さや周辺の競合状況、地域の賃貸借慣行などにも左右されますが、できるだけ多く預かっておきたいことには変わりありませんね。