とあるお客様で不動産に関する質問をいただきました。

もうぼろぼろになっている工場をどうするか、というご質問でした。

建て替えるにしてもリフォームするにしても「追加投資」ですね。

建築や不動産関係の営業マンに聞いてみるとこうなります。

一般的な建設会社や工務店の営業マンに聞くとこう言うでしょう。

「そろそろ建て替えの時期だと思いますよ」

リフォームに強い会社に聞けば

「リフォームでしのぎましょう、まだまだ躯体は大丈夫です」

と言うでしょう。

ついでに不動産仲介会社に質問したら

「いっそのことそのまま売ってしまいましょう

 買ってくれる人いますよ」

と言うでしょう。

ちなみに物件の維持管理をしている「管理会社」ならなんというかわかりますか?

それは

「リフォームでしのぎましょう、まだまだ躯体は大丈夫です」になります。

なぜなら、建て替えたり売ってしまったら、

そのはずみで管理の仕事が無くなってしまうからですね。

リフォームであれば劇的な変化はありませんので

管理の仕事は無くならないでしょう。

結局のところは「自社の目先の仕事になることが最優先」なんですね。

それが当然だと思います。

予算のない営業マンなんていないですから。

判断に必要な本当の答えは「会社の経営状況」のなかにあります。

ご質問いただいたトップのかたのお話しをざっくりまとめると

こういう状況でした。

・これまで作ってきた商品が転換期を迎えている

・社長が息子に代替わりしたばかりで経営手腕はまだこれから

・建物は老朽化しているがもう2,3年はなんとか持ちこたえられそう

・借金(借入金)が大きいのでもう少し圧縮したい

このような状況でした。

ものごとを決める意思決定は早いほうがよいのですが、

実はそのなかには、

「投資をするかしないかを決めること」

も含みます。

つまり、

「今追加投資するのではなく環境が変化したときに決める」

と決定することも答えの1つです。

金融工学の世界では

このように意思決定のタイミングを延ばす考え方を含んで

「リアルオプション」と呼ばれます。

内部環境や外部環境など、

どうしてもいま決まらないことがあるとします。

ここでは

「息子の経営手腕が高まるかどうか」

「新商品の事業化が成功するかどうか」

あたりです。このような重要な経営要素が不確定な状況では

土地や建物をどうするかという高額の投資に関わることは決め切りません。

逆にいうと柔軟性があるともいえます。

後で決めることにチャンスがあるといえます。

息子の経営手腕や新商品の事業化の目途が決まってから

追加投資をするかどうかを決めれば良いと考えます。

新商品の事業化が決まれば設備を拡張できるかもしれません。

決まらなければ工場を縮小して土地を切り売りすればよいでしょう。

息子がいますぐに重要な会社の判断をすることが難しいかもしれませんね。

私の提案はこのようなものです。

・息子の経営手腕や新商品の事業化の目途が決まるまで大きな判断は待ちましょう

・それまで老朽化している建物は最低限のリフォームで延命しましょう

・いまできる借金返済を少しずつ増やしていきましょう

・事業化の目途が出てきた時点で追加投資の是非を判断しましょう

というものでした。

内部環境・外部環境がはっきりしないときには、慎重な判断が必要です。

今できることとして、

「投資をするかしないかを決めること」

いまは動かさなくてもそれを決めることさえできれば

経営者の大きな一歩だと私は考えています。