老人ホームの場所を決めるときにどうやって決めればよいでしょうか。
これまでのご紹介の経験から、考えられる選び方をピックアップしてみます。
1 生まれ育った場所を基準にする
2 家族が通いやすい場所を基準にする
3 とにかく予算次第
4 必要な医療サービスによる
5 縁もゆかりもないけど海辺や良い風景を基準にする
順番に見ていきたいと思います。
1 生まれ育った場所を基準にする
生まれ育った場所の近くに移りたい、というのはかなり多い選択方法です。
たまには自宅に戻りたい
友だちがいる
安心できる
などの理由があります。
ホームに入居した方の何割かのかたはいまでも「自宅に帰りたい」(帰宅願望)があります。
認知症になってしまったかたですと、家族から見れば選んだホームが「終の住み家」として整理しているつもりでも、本人はホームが病院だと思っていて、「いつになったら自宅に戻れるのか」と仰るかたもいます。
それぐらい自宅に対する思いが強く残っています。
ご家族も近くにいることが多く、最もポピュラーな選び方と言えるでしょう。
ですが、基本的な面倒を見るのはホームにお願いするとしても、ご家族が引き続き面会をしたり声をかけてあげたい、というご家族も多くあります。次の例になります。
2 家族が通いやすい場所を基準にする
ご実家が家族の住まいから距離があって、その近くのホームに入居させてもほとんど顔を出せなかったり、もう地縁というほどの関係も残っていなかったりする場合には、ご家族の家の近くを選ぶ方法があります。
ときどき「それはちょっと自分勝手なのかな?」と自問するご家族がいますが、そんなことはありません。とても記憶がしっかりしていて上記1の「生まれ育った場所の近く」を本当に希望されている場合には考慮してあげるべきことも多くありますが、たとえば認知症が進んでしまった場合や、自宅に連れて行ってあげる家族も親族もいない場合には、思い切ってご家族の家の近くにするケースは意外に多くあります。
実は、家族が本人に会いに行ってあげることは、介護事業者にとっても「心配してくれる家族が近くにいる」という意味で安心材料になりますし、遠き自宅の近くにあるホームを選んだばっかりに家族がほとんど来てくれないと、ホームの介護事業者は「この人の家族は年に1回ぐらいしか来てくれない」と感じ、あまり本人のケアに気をかけなくなるケースもあります。
家族が会いに行くということは、実は介護事業者にとっても本人にとっても緊張感や気持ちが伝わるという意味で、とても大事な行為になっています。
3 とにかく予算次第
ホームを選ぶうえで予算はかなり大きな要素になります。
生まれ育った場所の有料老人ホームの利用料がどこも高い場合には、どうしてもそのエリアを選ぶことができません。
したがって、「できるだけその近くで」と考えつつも、郊外方向に移動することで利用料が安くなります。
利用料の何割かは土地代や建物代を反映した「家賃」部分が含まれているからです。
ですが、食費や人件費も何割かを占めていますので、下がる幅には限界もあります。
郊外のとても不便な場所で、土地代が本当に安いといえそうな立地のホームを探すととても値段が安いところが見つかったりします。会いに行くのは不便になりますが、背に腹は代えられない場合、そのような選択肢もあります。
4 必要な医療サービスによる
現在、救急病院やリハビリ病院、老人保健施設などにいて、退院や退所が促されている場合、これまで必要だった医療行為について、引き続きホームでも提供してもらわないといけない場合があります。看護師によるメンテナンスやケアが必要な場合です。
主なものとして、
・点滴
・いろう
・経管栄養
・痰の吸引
・カニューレ
・ストーマ(人工肛門)
・カテーテル
・インシュリン注射
などがあります。
このような場合には、上記の対応をしてくれる看護師がどれだけの時間、ホームにいるのかを確認する必要があります。
・訪問看護(ホームに常駐しておらず、決まった曜日や時間に外からやってくる)
・日中看護(朝から夕方まで常駐していて対応可能)
・24時間看護(24時間常に看護師がいる)
の中から選ぶことになります。
24時間看護が可能なホームは比較的珍しいと言えますすので、場合によっては便利なエリアではなく、もう少し不便な場所になることがあります。
5 縁もゆかりもないけど海辺や良い風景を基準にする
この基準は、主に自立や要支援、あるいは軽い要介護度のかたが自分の意思で選ぶ場合に時々見受けられます。
「若いとき海が好きだったので毎日海が見たい」とか
「湘南が好きなのでそこで余生を過ごしたい」
といった場合です。
ご家族にとっては通うことが大変になることがほとんどですが、このような場合、本人の意思は「家族が来てくれることより自分の毎日が大事」といった強めの意思を持ち合わせていることが多いです。リゾート地にある健康型有料老人ホームという種類のホームもその一例です。
このような場合、認知症状が発症してしまった場合や要介護度が重くなった場合に、引き続き面倒を見てくれるかどうかなど、そのホームが対応できる介護の範囲をよく確認しておく必要があります。