老人ホームへの入居を考える場合、お金の負担は避けて通れない話題です。

とはいえホームの探しはじめの段階では耳慣れない言葉や仕組みがよく出てきます。

事前にポイントを整理しておきましょう。

基本的な料金の考え方

基本的な料金の考え方

料金について、大きく分けると2つにわかれます。
1 入居するときにまとめてお支払いするお金(入居一時金)
2 入居が始まってから月々お支払いするお金(月額利用料)

の2種類があります。入居一時金がないと記載があっても、別名目で支払いが必要な場合もありますので下記をご覧ください。

入居一時金の仕組み

1 入居一時金の仕組み

入居一時金はその性質によって2つの種類に分かれます。

①100万円以上するなど、家賃の前払い分のような形である程度まとまったお金を払うもの
②アパートやマンションを借りるときのように「敷金」といった名目で、退去時には返してもらえるもの

があります。

①は、入居一時金や前払金などと呼ばれます。
入居するときの本人の年齢に応じて「想定入居期間」というものが定められており、
その期間の家賃合計額やその合計額の何割かを入居時に前払いするものになります。

まとめて先に支払うためデメリットになると思われがちですが、毎月に支払う2の費用がその分だけ減少しますし、
また、ホームで決められている「想定入居期間」を越えて入居を継続した場合には、その超えた期間以降は前払いでも月払いでも
家賃相当額は支払わなくてよいので、長居できるかたにはとてもお得な仕組みといえます。

お亡くなりになってしまったり、途中で別のホームへ引っ越しするなどの場合には解約となり、
想定入居期間のうちの残りの期間に対応した分だけお金が返ってくることが多いのですが、
税所に預けた額の1割~3割前後は「償却金」と呼ばれて、返金の対象から外される場合がありますのでご注意ください。
具体的な金額の例を下に記載しています。

②は、アパートやマンションを借りて退去するときに、クリーニング費用などを差し引かれて返金されるものです。
あまり部屋のなかを汚したり傷つけることは介護施設では多くないのですが、まさにアパートやマンションの解約時と同様に、
退去時にはクリーニング費用などを差し引かれて返金されます。

月々お支払いする利用料以外の費用

2 月々お支払いする利用料以外の費用など

入居が始まってから月々お支払いするお金は、表示されている利用料などを含めて、全体で主に次の6点の合計となります。
 
①施設利用料(家賃、管理費(職員の提供するサービス費用)、光熱費、食費、加算分など)
②介護保険料(負担割合(1~3割)と要介護度により増減します)
③往診の医療費(往診に来られる医師に支払う医療代金)
④お薬代(③の先生が処方する、いつも飲むことになるお薬代)
⑤消耗品費(おむつ、パット、ティッシュ、洗剤などの消耗品類)
⑥その他(レクリエーションの追加費用や散髪代など)

このうち、①は施設側でもパンフレットやホームページに明確に起債がしてありますので比較的わかりやすいです。

②の介護保険料は、パンフレットやホームページの①の料金の下や別のページに、要介護度や負担割合に応じて記載がされています。
1割負担の場合要介護度に応じて、10000円~35000円と記載されていることが多いです。
月々利用する介護保険サービスの利用料に応じて増減する場合もあれば、固定額で徴収される場合もありますが、
日常生活の能力が衰えてしまい要介護度が大きくなるとこの金額も大きくなります。

これまでケアマネジャーが来てくれていろいろなサービスを利用してきたかたで、「住宅型有料老人ホーム」に入居した場合には、同じような役割でくケアマネジャーが登場して必要なサービスをアレンジしてくださるので、その場合には自宅で介護しながら支払っていた介護保険料と同じような金額になることが多いです。

一方、「介護付き有料老人ホーム」の場合には要介護度に応じてまた少し異なる価格体系が適用されますので、自宅にいたときよりも増額となることが多いです。

③病院に外来で通院したときに病院に支払う必要と同じものとお考えいただければと思います。
往診に対する対価ですので、特別な検査などは別途に病院に行かないと受診できないため往診費には含まれません。
 
④持病や外傷などに伴い継続的に服用するお薬代や目薬代などが該当します。
外来で通院するときは院外薬局に並んで支払ってお薬をもらっていましたが、ホームでは、提携先の訪問型の薬局が薬をもってくださり、ホームの職員さんが毎食時などにお薬を持ってきてくれます。お支払は月額の施設利用料と同様に口座から引き落とされます。

⑤消耗品費は使った分だけ支払う必要があるものになります。
 おむつやパット、洗剤などは家族が現物をスーパーで購入してホームに持ち込んだり、行政によっては役所がおむつを無償で提供してく れるところもあり、消耗品費自体を別の形で補うことができる場合もあります。

⑤ホームのなかで特別にお金のかかるレクリエーション(生け花やプロの演奏家の演奏など)や特別食(追加費用がかかるもの)の費用、髪を切るための訪問美容院の利用料などが追加されたりします。このような費用は参加・利用をしなければ不要となります。

いろいろ付いている「加算」とは

ホームのなかには、例えば認知症のかたには特別に対応できるスペシャリストが常駐していたり、
リハビリのための専門家(作業療法士・理学療法士・言語聴覚氏など)が常駐していることで、グレードの高いサービスを提供できるホームがあります。
入居者側はそれを利用できることで質の高い生活ができるため、その一部分を「加算」という追加の費用を負担することで利用ができるという仕組みです。
「加算」のなかには、そのサービスを利用することで支払うものと、利用の有無にかかわらずホーム全体(のグレードアップ)に対して支払うものがあります。


加算には次のようなものがあります。
・認知症加算
・介護職員等処遇改善加算
・科学的介護推進体制加算
・総合マネジメント体制強化加算
などなどがあります。

一つ一つの中身を細かく理解することはなかなか難しいのですが、気になったものについては、
・その加算があることでこのホームはどういう点でグレードがアップしていますか?
・その加算は私たち家族も負担しないといけないですか?

この2点をぜひご確認ください。
それにより、このホームがどういう点に力を入れていて、私たちは何を負担することになるかがわかります。
金額的には月額数百円のアップ程度のものが多いのですが、重なると負担も増えますので、しっかり確認しておきましょう。

解約時の一時金の戻り方

解約時の一時金の戻り方がわからない

入居しているホームを解約すると、上記の一時金が返金されますが、
1は残っている期間により異なります。
2はクリーニング費用が控除されて返金されます。

ここでは1について詳しく説明します。

例えば入居時に720万円を支払うホームがあるとします。
その720万円は想定入居期間に対応する家賃の前払い金になっていることが多いです。
たとえば、90歳で入居した場合に、想定入居期間が6年とされている場合、
毎月10万円が家賃相当額だとしますと、10万円×12か月×6年=720万円が家賃の前払い金となり、それを「入居一時金」として支払うことになります。
(何歳が何年入居すると想定されているかは、各ホームが自分たちのルールに基づいて決めています)

ですが、たてえば3年経過した場合に、並行して申し込んでいた特別養護老人ホームへの入居の抽選に当たって、引っ越せることになったとします。
そうすると、返金額は、[6年(最初の想定期間)ー3年(入居してきた期間)]÷ [6年(最初の想定期間)]=50%が返金されそうなイメージです。
具体的には、お支払いした720万円の50%の360万円が返金されそうです。

ですが、実際にはホーム側では「償却分」というものが計算上設定され、720万円のうちの1~3割程度を除外した、残りの7~9割を分母として、その50%を返金する、といった計算をするホームが多いです。
「償却分」=数年間でもお世話をしてくれたホームへのお礼金または事務手数料、といった感覚でとらえていただければ理解に近づくでしょうか。

解約の理由としてはご逝去された場合も返金となります。
ただし、返金には退去してから数か月を要するなど、少々時間がかかることにご留意いただければと思います。