とある大手ハウスメーカーの「サービス付き高齢者住宅」を内覧する機会があり見てきました。
外見はふつうの3F建マンション、という感じですね。
営業マンがどんどん自分たちの強みを語ります。
・エントランスは我々が分譲マンションなどでも使う石を張り詰めてあり高級感があります。
・重量鉄骨がベースの弊社でも柱の数は相当少なくすることができ、大空間を実現しています。
・戸建て住宅で使っている良い使用の建具を導入しています。
・確認申請は共同住宅扱いなので外には必要最低限の駐車場を確保しています。
・有料老人ホームよりは一回り小さい厨房です。
・共同住宅なのに廊下はかなり広く作ってあり車いすの方も通れます。
・通常は段差ができるのものですが、高齢者の方向けにバリアフリーを追求しており段差がありません。
・洗面台や棚は多少低いものを使っており高齢者に配慮しています。
・これまで働いてきた方々をねぎらいちょっと高級なフローリング(深い茶色)や建具を使用しており落ち着いた空間です。
まぁ、自分たちの都合のセリフがどんどん出てくるのは結構なんですが、良いことばかり主張して悪い点が知らされないことに気付いていないと思っているとすれば、そろそろPR方法を考えるべきでしょう。
多少視点を考えれば、素人だってこのように気づきます。
・分譲マンション仕様の大量仕入れの石を使いまわしている
・鉄筋コンクリートなら柱など不要になるのに「鉄骨」ベースの弊社でも努力してます、というセリフの違和感。
・なぜか駐車場は1台ずつの間に壁があるためぶつけやすく本当に高齢者に優しいのかどうか。
・高齢者住宅なら廊下は広くてあたりまえ。
・段差もなしにするのがあたりまえでしょう。通常のメーカーの仕様を前提にしてはいけない。
・深い茶色の高級感が本当に高齢者に好まれるものなのか。
消費者目線とはとても思えない作りこみと思ってしまいます。
原価の見地から見ますと高齢者向けでシンプルになっておりデザイン性や機能面では余計なものがなく
(緊急を知らせるボタンは随所に設置されておりその機能はあるが)コストはかなり抑えられているように見受けられます。が、 建築費は十分な坪100万円級のようですね。
最も優しいキッチンはその高さが上下するものがあります。
しかしながらさすがにそこまではコストをかけられないのでしょう。
自分たちが築き上げた工法や仕入れルート、購買力というものは強みでしょうが、それをそのままサ高住に持ってきているところに消費者目線との乖離が生まれているように思います。
それにしてもすごい接着剤のにおいでした。フォースター(F☆☆☆☆)の素材を使っているので安心というセリフこそありませんでしたが、高齢者に優しいとはとても思えないものでした。
さて、高い建築費が高い家賃にはねかえり、資産と年金に潤沢な高齢者のみが入居できる物件が供給されていきます。
高収入者向け高齢者賃貸住宅。
上澄みの利益を拾いにいくような建築物。
高齢者増のなかでの専用住宅を供給する必然性はわかりますが、そのようなマーケットゾーンのみを拾いにいく限りにおいては大手のノウハウを駆使して安価・最適なインフラを提供しているという印象は全く感じないですね。
低収入の方にとっても快適な生活空間を作る、エネルギーや強みをそういう発想に活用していただけないものかと思った本日の内覧でした。