つい先週の週末のことでした。

テナントとの条件交渉のお手伝いをしてさしあげている

ビルオーナーさんがいるのですが、

その件でテナントさんに

「お店をたたんでもらえませんか」

とお伝えをすお仕事がありました。

「たたんでください」とは

廃業または引っ越してください、というお話しです。

テナントさんはかなり長らく営業をしている飲食店です。

ずいぶんまえから勝手に家賃を減額して振り込んできています。

オーナーさんはそれについて黙認したわけではないのですが、

もうかなり長い期間、その安い家賃を受領し続けてきました。

ついでに更新料も契約書上には記載があるのですが、これも支払ってきていません。

金銭の支払いという面では「債務不履行」になるのですが、

何食わぬ顔で営業を続けています。

結構やりたい放題のテナントさんといえそうです。

では、

「家賃不払いを理由に契約をすぐに解除して退去してください」

という話がすぐ通用するかというと

そういうわけではありません。

オーナーからは家賃の支払い不足を正し、

書面で提示し、

長期間にわたり何度も督促をしてきたのにそれでも払ってこず、

大家と店子でとても信頼関係が続いているとは言えない状況

つまり

「信頼関係の破壊」

が起きなければ、

家賃不払いを理由としてもすぐに退去を促すことができない、

というのが民法・借地借家法における考え方です。

それほど、店子というのは居住権・営業権といったものを

法律により保護されているといえます。

幸いにもこちらのテナントさんは、

売上が下がってきていたり、

体調がイマイチなどいくつかの理由が重なり、

「いますぐではないがゆくゆくであれば退去を考えても良い」

という回答が得られました。

大変ラッキーなほうのお話しでした。

立ち退き交渉というのはどうやったら成功するのでしょうか?

「定期借家契約」という建物賃貸借契約により、

契約の期限をきっちりと決め、

その期間が満了して退去を促すという場合を除いては、

確実に立ち退き交渉に成功する、ということはありません。

弁護士さんにお願いすれば、

交渉を代行して進めてもらえますが、

必ず立ち退きの交渉が成功する、

ということでもありません。

引っ越し費用をそっくり負担してあげたり、

過去に生じてしまった賃料不払い分や更新料を免除してあげたり、

建物があまりに老朽化しているため建て替えが必要だ、

などの理由を重ね合わせて、

なんとか交渉して出ていってもらっている、

というのが実状です。

絶対に確実に追い出せる、というものではないのですね。

多くの場合、立ち退き交渉は

法律によって味方されていません。

ですので弁護士が登場しても難しいというわけです。

ですが弁護士さんの頑張りと交渉力によって

たまたま立ち退きの合意に至っている、

といったほうが正しいですね。

建物が老朽化しており

ゆくゆく建て替え無くてはいけない場合には、

まずは〇年後に退去することを確約させるという

「定期借家契約」に切り替えることから

始めるのがよいでしょう。

それによってテナント側もすぐではなく

ゆくゆく店舗の今後の方針を考えることができますし、

オーナー側も比較的カドが立たない交渉を

展開することができます。

急にものごとは進みません。

時間軸を作り、よく考え、

計画的な立ち退き交渉を進めたいところです。

このあたりは弁護士の先生や不動産コンサルタントとよく

相談いただきたいと思います。